2018年 11月 08日 | 福祉 | Posted by ブログ管理者

澄んだ秋空のある日、四国の香川県善通寺にある病院を訪ねた。
ホスピタルアートで話題となっている「四国こどもとおとなの医療センター」を見学するために。

此処は、2013年春に、香川小児病院と善通寺病院が統合され、689床をもつ
県の災害拠点病院の一つにもなっている病院である。
院内に、アートを取り込むそのアプローチと成果が注目される。

病院や施設に、絵画や彫刻などのアートを設置することは稀ではないが、この導入の方法はかなり異なる。
院内にホスピタルアートディレクター(森合音氏)を置き、病院長と彼女のディレクションの元、院内や地域の皆んなでアートを創り上げている。
 
アートを「作品」としての完成形ではなく、「対話のひとつのプロセス」として捉えているように思う。
四国こどもとおとなの医療センター

訪問当日、残念ながら森氏は不在であったが、
活動を共にして、医療の事務職を務めつつ屋上庭園を自分で創る山口氏に、
アートキュレーターの執務室でもあり、この活動の拠点となっている一室で、話を伺う。

「アートの導入は、病院が統合される前から展開されていました。院長や森さんの発想が豊か!
それが今、大きな流れになってるんだと思います。
アート活動で一緒に患者さんを病院を良くしよう!~と言われても、
最初は何をどうすれば良いのかわからなかった(笑)。

とにかく分らないながら、キュレーターの森さんのもとで動いていると、色々なことが実感されます。
日頃病院では、言葉には出てこない事、会議ではアジェンダにならないこと、、、患者さんや働く私達の「不安」や「期待」、「それぞれの気持ち」や「大切にしている想い」などが、自然と言葉になります。

それによって、組織上では離れた人と会話ができたり、相手の事情が理解できたり。知らない間に、皆で改善提案を話していたり、次の行動を起こしていたり(笑)。」


四国こどもとおとなの医療センター ボランティア室
たくさんの画材やクラフト素材でいっぱいの執務室。この取り組みを明るく語る山口さん。

「そればかりか、先生や看護師や、地域の人たちと一緒にワークしたり、あるいは
一人で黙々を作業している時、それが自分の心を整えたり、落ち着かせたりしています。

アートを皆で作って病院に来る患者さん達に、安心して治療を受けて頂きたいと思いつつ、ケアしているのは、実は自分だったり(笑)。
セルフケアですね!(笑)」



ヒノキ.
(上左)ヒノキでできた画材収納庫をペインティングのために丁寧に下処理。自分がやりたい!とボランティアスタッフの一人が作業中。
(上右)各科の先生や看護師たちと作った、病室にかける時計たち。
(左下)ドローイングをそのまま日傘として。屋上庭園での暑さよけ。
(左下)扉の中には、プレゼント。患者さんやご家族、ボランティア等が心を込めて作った小物やメッセージ。
見つけた人は、だれでも持ち帰れて、ふと心が温かくなる。


アートの取り組みという装置によって、ひとり一人の心が開かれていく。
これはダメ、こうあるべき、常識的にはこう、なんて云う自分の固定観念も
アートにかかわりながら、溶けていく。
この場はまさに共創の場であり、組織のクロスオーバー、対話の場、
リフレッシュの場、自分のリセットの場となっている。


こびとのおうち
病院の入り口には、こびとのおうち。芝生に入って傷めない、ユニークな配慮。
この病院のためにオリジナルで創られるペンキの数々。


この開放された活動の影には、勿論、森氏と院長のグランドデザインがあり、
いつ何を誰と、どのような表現で展開するかの詳細設計がなされ、
全体設計には、デザイナーが入りプロセス自体をデザインしている。
たとえば、外観のクスノキのペインティングは、塗装の色をオリジナルで調合。
その色のレンジの中で、皆で彩色している。
此処の絵は、皆で書いているがそれをどうレイアウトするか~は、精緻に計算されている。
クリエイティブの視点からみても、実はかなり精密で丁寧で手間のかかるワークを展開している。

時は2018年。
病院に限らず、組織では、現場の働き方やコミュニケーションを活性化して、
新しいサービスや技術を生み出すことが求められている。
そんな中にあって、この取り組みは、病院と地域、病院の患者さんとメディカル&コメディカルスタッフのひとり一人を「気持ち」のレベルでつなげて、
皆の、こうありたい~という「未来をデザインしている」と実感した。

(湯浅)

■訪問先
独立行政法人国立病院機構 四国こどもとおとなの医療センター
香川県善通寺市仙遊町2丁目1-1
http://shikoku-med.jp/


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