1  2

2018年 11月 08日 | 福祉 | Posted by ブログ管理者

澄んだ秋空のある日、四国の香川県善通寺にある病院を訪ねた。
ホスピタルアートで話題となっている「四国こどもとおとなの医療センター」を見学するために。

此処は、2013年春に、香川小児病院と善通寺病院が統合され、689床をもつ
県の災害拠点病院の一つにもなっている病院である。
院内に、アートを取り込むそのアプローチと成果が注目される。

病院や施設に、絵画や彫刻などのアートを設置することは稀ではないが、この導入の方法はかなり異なる。
院内にホスピタルアートディレクター(森合音氏)を置き、病院長と彼女のディレクションの元、院内や地域の皆んなでアートを創り上げている。
 
アートを「作品」としての完成形ではなく、「対話のひとつのプロセス」として捉えているように思う。
四国こどもとおとなの医療センター

訪問当日、残念ながら森氏は不在であったが、
活動を共にして、医療の事務職を務めつつ屋上庭園を自分で創る山口氏に、
アートキュレーターの執務室でもあり、この活動の拠点となっている一室で、話を伺う。

「アートの導入は、病院が統合される前から展開されていました。院長や森さんの発想が豊か!
それが今、大きな流れになってるんだと思います。
アート活動で一緒に患者さんを病院を良くしよう!~と言われても、
最初は何をどうすれば良いのかわからなかった(笑)。

とにかく分らないながら、キュレーターの森さんのもとで動いていると、色々なことが実感されます。
日頃病院では、言葉には出てこない事、会議ではアジェンダにならないこと、、、患者さんや働く私達の「不安」や「期待」、「それぞれの気持ち」や「大切にしている想い」などが、自然と言葉になります。

それによって、組織上では離れた人と会話ができたり、相手の事情が理解できたり。知らない間に、皆で改善提案を話していたり、次の行動を起こしていたり(笑)。」


四国こどもとおとなの医療センター ボランティア室
たくさんの画材やクラフト素材でいっぱいの執務室。この取り組みを明るく語る山口さん。

「そればかりか、先生や看護師や、地域の人たちと一緒にワークしたり、あるいは
一人で黙々を作業している時、それが自分の心を整えたり、落ち着かせたりしています。

アートを皆で作って病院に来る患者さん達に、安心して治療を受けて頂きたいと思いつつ、ケアしているのは、実は自分だったり(笑)。
セルフケアですね!(笑)」



ヒノキ.
(上左)ヒノキでできた画材収納庫をペインティングのために丁寧に下処理。自分がやりたい!とボランティアスタッフの一人が作業中。
(上右)各科の先生や看護師たちと作った、病室にかける時計たち。
(左下)ドローイングをそのまま日傘として。屋上庭園での暑さよけ。
(左下)扉の中には、プレゼント。患者さんやご家族、ボランティア等が心を込めて作った小物やメッセージ。
見つけた人は、だれでも持ち帰れて、ふと心が温かくなる。


アートの取り組みという装置によって、ひとり一人の心が開かれていく。
これはダメ、こうあるべき、常識的にはこう、なんて云う自分の固定観念も
アートにかかわりながら、溶けていく。
この場はまさに共創の場であり、組織のクロスオーバー、対話の場、
リフレッシュの場、自分のリセットの場となっている。


こびとのおうち
病院の入り口には、こびとのおうち。芝生に入って傷めない、ユニークな配慮。
この病院のためにオリジナルで創られるペンキの数々。


この開放された活動の影には、勿論、森氏と院長のグランドデザインがあり、
いつ何を誰と、どのような表現で展開するかの詳細設計がなされ、
全体設計には、デザイナーが入りプロセス自体をデザインしている。
たとえば、外観のクスノキのペインティングは、塗装の色をオリジナルで調合。
その色のレンジの中で、皆で彩色している。
此処の絵は、皆で書いているがそれをどうレイアウトするか~は、精緻に計算されている。
クリエイティブの視点からみても、実はかなり精密で丁寧で手間のかかるワークを展開している。

時は2018年。
病院に限らず、組織では、現場の働き方やコミュニケーションを活性化して、
新しいサービスや技術を生み出すことが求められている。
そんな中にあって、この取り組みは、病院と地域、病院の患者さんとメディカル&コメディカルスタッフのひとり一人を「気持ち」のレベルでつなげて、
皆の、こうありたい~という「未来をデザインしている」と実感した。

(湯浅)

■訪問先
独立行政法人国立病院機構 四国こどもとおとなの医療センター
香川県善通寺市仙遊町2丁目1-1
http://shikoku-med.jp/


Posted by ブログ管理者

2016年 02月 29日 | 福祉 | Posted by ブログ管理者

去る2/19(金)、六本木一丁目のHAB-YU PlatformにてJIDAとトリニティにて開催された第一回福祉・介護アイデアソン。
その会場で、これからの福祉・介護の問題の解決に並々ならぬ関心を持った、デザイン大学生2名が駆けつけてくれ、トリニティ・ソーシャルケアデザインのメンバーとして共にワークショップの運営に奔走してくれた。

デザインを学ぶ立場からこれからの社会に出て行く学生の彼らは一体、どのような関心や問題意識を持っているのだろうか。トリニティの福祉・介護活動である「ソーシャルケア・デザイン」をとおして、それらは常に関心事だった。

今回、ワークショップに運営メンバーとしてご協力頂いた学生2名から当日の率直な感想を頂いたので、ここにご紹介したい。

***************************************************************
カメレオンのように、当事者に成り切ることのできるデザイナーに

ワークショップのお手伝いをさせていただいた、東洋大学の小野塚です。
少し自己紹介をさせていただきますと、私の学部はライフデザイン学部人間環境デザイン学科と言い、人間を核としたユニバーサルデザインを創造し、空間、福祉機器、プロダクトデザインの3つの観点から学ぶ総合学科です。
学校では今回のワークショップに近いアイデアワークも多く行ってきました。
しかしこのワークショップでは、初めて運営側の立場となり、違う角度から物事を見ることで、
新たな発見がいくつかありました。
1つ目は蓮見孝先生のお話にあったホスピタルデザインという領域の知識です。
D(Design)×N(Nursing)=W(Wellness) 看護とデザインが健康を産む
という考え方をします。
re_1100227.jpg

例えば日本の病院では'"静か"が基本ですが、アメリカでは"ノイズ"(うるさいことがいいこと)によって安心感を与えるものとされている病院があります。これを聞いて私は過去の固定観念にとらわれず、人間の本質を見抜くものづくり、環境づくりが今後は重要になると考えました。

2つ目はワークショップを外から見て、各テーブルを周っていると、「食は人を豊かにする」「これは嬉しいだろう」など自分を様々な立場に置き換える声が聞こえてきました。ふとカメレオンみたいだなと、、カメレオンのように自分を当事者に変化させる、これこそ豊かな生活をつくる最も重要なことではないかなあと考えました。
re_1100250.jpg

re_1100331.jpg
今回の経験は新たな気づきと出会いのあるものでした。私もカメレオンとなりこれからのものづくりに活かしていきたいと思います。

東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科
小野塚亮祐

***************************************************************
デザインのあたたかさで福祉をより良く

先日は、トリニティ(株)のソーシャルケア・デザインのスタッフとして素敵なアイデアソンの場に参加させていただきました。
私は学生で、普段は個人またはグループでアイデアを出し、発表することで学びを深めています。なので、アイデアソンのようなアイデアが生まれる場を客観的に見ることは、新しい刺激でした。

今回のワークショップのはじまりは、蓮見教授や秋本可愛さんによるお話からでした。
実際に立ってみないとわからないような福祉の現場の様子が共有され、今まで知らなかった目線から福祉の場を見ることができました。
re_1100242.jpg
さて、お話の流れを踏まえて自分が介護を必要になったときにどんな食の体験・経験を提供してほしいかという討議から課題を発見していくかたちでアイデアソンは進みました。アイデアソンが進むにつれて自分に置き換えた意見から、介護を受ける側、する側、
経営側の目線による意見へと発展していき、グループでの意見交換が盛り上がっている様子がとてもよい雰囲気でした。
re_1100408.jpg

re_1100439.jpg
そんな中ででたアイデアはどれもクオリティの高いもので、食によるコミュニケーションの可能性を感じました。

デザインのあたたかい風で福祉が人にとってよりよいものになる予感がするワークショップでした。

東洋大学ライフデザイン学部人間環境デザイン学科
内笹井里枝子

***************************************************************
彼ら学生達の感想には、新しい気付きを得たことによる新鮮な喜びや瑞々しさが満ち溢れていた。
こうした機会を継続的に作っていくことで、デザインを通して福祉・介護の未来に向けて、関心を高めていくことがまだまだできるはずと感じた。

これからもトリニティでは継続して福祉・介護アイデアソンを実施していきます。

Posted by ブログ管理者

2016年 02月 23日 | 福祉 | Posted by ブログ管理者

弊社の運営する社会活動である「ソーシャルケアデザイン」のコアメンバーが企画・実施する、JIDA主催の福祉&介護アイデアソンが行われた。

場所は、六本木一丁目にある富士通デザイン運営の「HAB-YU platform」
活気あるイノベーションスペースだ。
(同社はほど近くに「テックショップ」も立ち上げた。共創の場づくりに真剣に取り組む代表選手である。)

●HAB-YU platform
http://hab-yu.tokyo/

●テックショップジャパン
http://www.techshop.jp/

当日は札幌市立大学理事長・学長である蓮見孝氏を基調講演に迎え、まずは蓮見教授の実績などをご披露いただく。デザイン&アートというものが、ソーシャルケアの分野...今回は病院での場づくり・人間関係づくりに、如何に機能するものかを語って頂いた。

冒頭の
「病院の中は、日常生活ではありえないことが普通となっている。
個人それぞれの生活ペースにあわない効率をベースとした集団生活、プライバシーの無さ。淡々と配給される食事?!患者側はいつの間にかこれが普通と思ってしまう。
もっと、院内が豊かに且つ闘病期間の質をあげることが、デザイン&アートにはできるはず」
というメッセージには今更ながらに、はっとさせられる。

_1100210re.JPG
札幌市立大学の蓮見教授による基調講演。
病院という場をアートで変えた、アプローチの数々をユーモラスな語り口でお話頂き、
ともすれば重くなりがちな話題も楽しく共有頂いた。

引きつづいて、アイデアソン。
ソーシャルケアデザインのメンバーであり、これからの介護士業界を変革すると期待される、秋本可愛さんによる話題提供。現場で今、何が起こっているかのレポートを皮切りにワークのキックオフ。

●HEISEI KAIGO LEADERS
http://heisei-kaigo-leaders.com/

ファシリテーターは、福祉アイデアソンのトップランナー、お馴染みの須藤順
●Social Care Design
http://care.trinitydesign.jp/

今回はテーマを「食まわり」として、日々の課題意識と現場の声などを受け止めた上でのワーク。

実はアイデアソンにおいて、課題をどう設定するか。これが鍵となる。
JIDAのメンバーもいるとあって、初回ながらグループワークのアウトプットはかなりのレベル。
合計、5つのアイデアが創出された。

講評段階では、辻安全食品株式会社の辻社長(御本人は医療コーディネーターでもある)もゲストで参加し、介護の現場からみるアウトプット評価に加え、生きる・老いる・楽しむ、といった本質的な視点でも議論が交わされた。
_1100332re.JPG

_1100470re.JPG
ワークショップ中の風景。おしゃれな雰囲気、考えることが楽しくなる工夫が随所に
こらされた共創の空間で、のびのびとワークに挑む参加者。
ディスカッションでは各所で笑い声が絶えない。


中でも、私が特に注目したのは、福祉施設の「食のシーンを豊かにするための大テーブル」のアイデア。

現在の福祉施設の食の現状に対して「介護者、入居者皆で食事をする」。
そしてその大テーブルにプロジェクションマッピングで様々なビジュアルや情報を出して「食卓のテーブルセッティングをその日によって変える」「季節の風景をテーブルで映して季節感を出す」「入居者さんの思い出ある出来事などもそこで皆で情報共有する」ことが出来る、大テーブルだ。
この大テーブルによって、皆がひとつになり楽しい情報が共有できる。
高齢者の脳の活性にも役立ちそうだし、介護者の作業プロセスも慣れれば改善できる可能性がある。

そこでふと思ったのが、グーグルのこと。
現在、建築家ノーマンフォスターがカルフォルニアの新本社を設計しているが、ここは自然環境に配慮しているだけでなく、どれだけ文化や専門分野の異なる社員の「共創の場」をつくれるか~にも挑戦している。
そこでは言うまでもなく「社員への食」についても真剣に検討され、食が如何に体調管理や精神管理だけでなく、組織をイノベーティブにするか~の視点で様々な施策が実践される。
MITも加わって、食を栄養学からではなく、サイエンスからアプローチしているようである。

その場に、このチームが生みだした大テーブルは、なかなか活躍しそうである。
_1100557_2re.jpg
最終プレゼンテーションの一コマ。
デザイナーの方が参加していることもあり、アウトプットは視覚化されたものが
多数。いずれもイメージが共有されやすく、会場からは共感の声があがった。

働く場において、食そのものの重要性・食べること・食べるときの環境を考えるフェーズに入ってきたが、そこでは単に見た目が綺麗で美味しい食事を出すだけではなく、どう食べるかが大切になると思う。

異なる文化、宗教、価値観の違いを超えて、マネジメントする側、される側の垣根をこえて、そして食べる、対話する、創発する~の曖昧性を助長して・・・。

福祉の課題を考えるとき、それは福祉デザインをどうするか~ではなく、福祉領域以外の課題にも転換して、私達の今と未来を拡大して考えることが出来るものなんだと、
しみじみ実感する一日でした。

トリニティ 湯浅(ソーシャルケアデザイン・メンバー)

Posted by ブログ管理者

2015年 07月 23日 | 福祉 | Posted by ブログ管理者

去る6/26、トリニティ恒例のセミナー企画、福祉×デザイン・アイデアソンの特別企画として、福祉施設訪問を実施した。

これまでの福祉×デザイン・アイデアソンでは毎回、福祉・介護・子育ての現場で活躍する方々をゲストに招き、ご参加頂いた方たちに現場からの生の声をお届けしていたが、今回はゲストに来て頂くのではなく、こちらから直接現場に赴いて「現場のリアル」を見に行こうという趣旨のもと、企画した。

今回、訪問したのは特別養護老人ホーム・アンミッコ。

施設に到着し、一歩足を踏み入れた瞬間、目の前に広がった景色に面食らい、思わずあっと声を出しそうになってしまった。
福祉施設の見学ということで、今回正直言って少なからず緊張したり、気が重い部分があったのだが、実際に足を踏み入れた時、目に飛び込んできたのは鮮やかな色彩であり、圧倒的な開放感、モダンなインテリアデザイン、そして効果的に取り入れられた自然の光...。

これはすごいところに来てしまったのかもしれない。あまりにもポジティブな装いを前に、それが正直なファーストインプレッションだった。

アンミッコ正面入口ロビー.JPG
一歩足を踏み入れた瞬間から、開放感ある鮮やかなインテリアに圧倒される

ロビーでは、代表の三浦祐一さんに直接お出迎えして頂いた。
今回、トリニティを中心とした見学のメンバー8名は、研修室に通された。

最初に、スライドが上映された。アニメーションで、次々と文字が表示されていく。
本当はもっとこうしたいな、こうだったらいいのにな。
こういうことは嫌だな。でも...

結局、言葉を飲み込む、我慢をする。そんな、少し悲しい物語。
それは決して発せられることのない、利用者であるお年寄りの人たちの、
叫びにも似た悲しい心の声だった。

それが福祉施設を利用する高齢者の方たちの置かれている現状であるとのことだった。そんな言葉の数々で紡がれたスライドを見た後、三浦さんがおっしゃっていた言葉が印象に残った。
「入居者の方がこういう思いをしない施設を作りたい」
その理想を実現するために、アンミッコは誕生した。

アンミッコ三浦様よりご説明.JPG
アンミッコについて代表の三浦様より詳細にご紹介頂いた。真剣に聞き入る参加メンバー一同。

先進的な取り組みの数々
ご紹介頂いた内容から、アンミッコは既存の特養ホームにはない、数々の先進的な取り組みをされていることがわかった。

まず、電子カルテの導入。日本国内での電子カルテ普及率は現状3割ほどであり、特に福祉・介護領域での導入は遅れているとのことだが、アンミッコでは積極的に導入している他、館内には無線LAN環境を整えてある。ビッグデータとしての将来の活用を目指し、先行してのデータ収集を行ったりもしているという。

次に建物の意匠設計。冒頭でインテリアの印象について述べたが、外観もマンションのようにモダンで美しく、施設名の看板などは見当たらない。これは「施設」ではなく、「住まい」を目指したから、ということだった。そのために意匠設計はイタリアで学び、現在はホテルや飲食店の設計などを手がける設計事務所に依頼する力の入れよう。
これほどまでに綺麗な施設を作り上げたの理由は、
「入居者にとっての豊かな人生のため」「家族の後ろめたさをなくすため」
「良いスタッフを集めるため」であるという。その目的は、現状でも既にほとんど達成されているのではないか、と感じた。

アンミッコ施設外観.JPG
アンミッコの施設外観。明るくモダンなイメージでまとめられている。

また、入居者にとっての「食」についても、述べておかなくてはならない。
アンミッコでは「ユニバーサルデザインフード」を提供している。これは、咀嚼力の弱いお年寄りを想定した刻み食、ミキサー食ではなく、食べやすくムース状に加工した上で見た目を重視し、おいしく本物に見えるように成形し直し、食欲がわくようにして提供するものだ。

刻み食、ミキサー食のサンプル画像を拝見したが、料理としての原型は全く失われ、これっぽっちも食欲がわかなかった。このような食事が毎日続けば誰だってうんざりするに違いない。食事は、生きていく上で大切な楽しみの一つだ。しかもミキサー食は加工の過程で水分が出て量が増えてしまうため、想定している量を食べきることができなくなってしまう。

その結果、体重が減少することになる。おおよそ体重が1割減ると死亡リスクが大幅に増加するということだ。
しかし、アンミッコが提供するユニバーサルデザインフードならば、本物の料理と見分けがつかないほど、形・彩りを再現しており、これならば食事も楽しくなりそうだ。
この方法で食事を提供しているのは、おそらく全国でここだけということだ。

きざみとミキサー食.jpg
アンミッコさまから提供された、従来の介護食のサンプル画像より。これらでは食事の楽しみは全く提供されないと感じた。

ユニバーサルデザインフード.jpg
一方、アンミッコが提供する「ユニバーサルデザインフード」。ぱっと見では普通の食事と見分けがつかず、思わずお腹が減ってしまう

サービス業のプロとして・スタッフ教育への取り組み
施設スタッフには「サービス業のプロであれ」、そして最高の「介護人」であれ、と教育している。入居者に対して「やってはいけないサービス」は存在しない。むしろ、あえて"不公平な特別"を推奨しているという。例えば入居者への足湯のサービスは、ある一人のスタッフの提案から始まったものだった。

また、お誕生日にはサプライズでお孫さんを呼ぶなど、感動を与えるサービスを目指しているという。サービス業のプロとして高い意識を持ってもらうために、スタッフには全員名刺を持たせているそうだ。通常の福祉施設では、役職を持たないスタッフまで名刺を持つことはほとんどない。

その高いプロ意識を醸成するため、当然スタッフの教育にも力を入れている。
看護師の教育にならい、介護職版のラダー教育プログラム作っている。
座学、知識、マインドといったところから実技、グループワークにまで段階ごとにステップアップしていき、修了までに6年間を要する、綿密に構成されたものだ。また、研修だけでなく、評価制度も合わせて充実させている。個人評価制度がきちんと導入されているところは、介護の世界ではごく少ないという。

少し意外だったのが、このカリキュラムはあるステップまで到達すれば、外に行っても良いというルールがある点だ。これは、現場の役職のキャパシティが限られているため、リーダーになるためには、外に出ないとなれないこともあるためだ。折角育てた人材が流出してしまうのは損失と受け捉えられるが、ここで育った介護士が外に出て行くことで、アンミッコのクオリティを広く啓蒙し、ひいてはアンミッコの知名度を高めるという、ブランディング的な側面もあると聞き、感嘆させられた。

こうした数々の取り組みに、国内はもとより中国、台湾などからも見学に訪れる人がいるという。福祉施設として、まさに先端にあると言っていいだろう。

施設見学
ひととおりご説明を伺った後、私達は実際に館内を見学させてもらった。
三浦さまのご案内のもと、廊下を進み、2階へ向かう。
途中、空調のダクトが目に入った。館内の温度・湿度はモイストプロセッサー(調湿機)によって快適に保たれており、特に湿度のコントロールによってカビやダニ、ウイルスまでをも防いでいるとのこと。

アンミッコの明るい館内.JPG
既存の特養ホームの常識を大きく覆す明るいイメージは、気鋭のデザイン事務所の手によるもの。天井にモイストプロセッサーのダクトが見える。

アンミッコ壁面には写真を展示.JPG
廊下壁面には写真作品が展示され、温かなな空間づくりに貢献している。

館内を歩いていてつくづく感じたのは、こうした医療・福祉施設につきまとう消毒薬などの、独特の「臭い」がまったく感じられないということだった。

これについては三浦様よりご説明があったが、オムツの交換が大抵の施設では定時交換(決まった時間に取り替えること)で行われているのに対し、随時交換としたり、処分する際は新聞紙にくるんでビニールに入れて処分とすることで、とにかく手間を惜しまないことによって排泄臭を徹底して取り除くということに挑戦しているということだった。

次に、浴室を拝見させてもらった。
お一人の入居者に対して、職員が二人で対応するという。大抵の施設では人員確保の点からこうしたことはほとんどなく、大勢の入居者の方を複数の職員がほとんどバケツリレー方式のような形で入浴させることになってしまっているという。それをとりやめてお一人ずつ個別対応とすることで、入居者の方にはゆっくりとリラックスして入浴してもらえる上、職員と入居者の貴重なコミュニケーションの場ともなったそうだ。

また、浴室壁面は通常、コンクリートとタイルによる作りなのを見なおして、マンションと同じ建材を使用。これによって浴室の寒暖の差がやわらぎ、ヒートショック対策になっているという。

アンミッコ浴室.JPG
施設ではなく、「住まい」であることを重視した結果、建材にもマンションと同じクオリティを求めた。

アンミッコ居室.JPG
居室は多人数部屋ではなく、全て個室タイプ。部屋の間違いを防ぐため、インテリアは3タイプあり、いずれも心地よく穏やかなテイストでまとめられている。

アンミッコ施設見学の模様.JPG
調理場について解説を行う三浦さま

アンミッコ中庭.JPG
福祉施設で自然光を取り入れた空間づくりは珍しいとのこと。

アンミッコ共有スペース.JPG
共用スペースは、家庭のリビングを思わせる佇まいにここが施設であることをしばし忘れそうになるほど。

今回の視察を通して実感したことは、超高齢化社会を迎える2025年以降の時代を見据えた介護・福祉現場でのイノベーションを起こすための取り組みは、既に高いレベルで始まっているということだった。

書籍やインターネットによる座学から学ぶことも大事だが、やはり一歩外に出て先端的な取り組みを直接目の当たりにすることで、福祉・介護の問題に対する私達一人一人の意識も変わっていくだろうと思う。
これからの時代をより良くデザインするために、たくさんの可能性の芽をみることができた、今回の福祉×デザイン・アイデアソンでした。

いつかは自分の親族、そして自分自身にも訪れる「死」。
その最期の時を過ごす終の棲家がこのような空間であったならば、
満足感に浸りながら余生を過ごせるのかもしれない。

お忙しいところ時間を割いてご案内してくださったアンミッコ代表の三浦様、職員の皆様方、そしてアイシン精機(株)稲摩様、JVCケンウッド・デザイン(株)鬼頭様、河西工業(株)小西様をはじめご参加頂いた皆様方、本当にどうもありがとうございました。

社会福祉法人 天佑 特別養護老人ホーム アンミッコ
〒359-0002 埼玉県所沢市中富1639-3
TEL:04-2990-2200 FAX:04-2990-2205
http://www.ammicco.or.jp/

記念撮影.JPG
最後に入口ロビーにて記念撮影。
とても和やかな雰囲気のもと、最後までリラックスして見学することができた。

Posted by ブログ管理者

2015年 06月 21日 | 福祉 | Posted by ブログ管理者

「2025年問題」「超高齢化社会」「在宅介護」
私たちがこれから生きる社会には、たくさんの「不安」が待ち構えています。
「まだ先のこと」「考えたくない」そう思っていると
まさか、の時に呆然としてしまうかもしれません。
人は生まれたら、必ずいつか終りを迎えます。
何があっても、精一杯、楽しんで感謝して、最期まで生きる。
私達はそれらを自らの意思でデザインすることが出来ると信じ、
そのための一つ一つを積み重ねていきたいと考え、対話の場を持ってきました。

今回は一つの視点にフォーカス。言葉だけは聞いたことがあるかもしれない「認知症(にんちしょう)」について。

2025年の認知症・有病者予測、約700万人と言われています。
もし、ご近所のあの人が、親戚の誰かが、家族の誰かが、友人が、そしてもしかして、貴方が...?
そう仮定した時、一体それはどんな世界なのか。共に、考えていきませんか?

内容:
(1)参加者からのライトニングトーク

(2)認知症について話題提供:山本幸美※
  ・認知症のことがわからない
  ・認知症の人にどう対応すればよいのかわからない
  ・認知症の人の言動に振り回されてイライラしてしまう
  ・病気なのは分かるけど忙しいと優しくできなくなってしまう
  こんなことはありませんか?

(3)グループワーク
  あるケース(ペルソナ)から、各チームで理想のケアの体制やプロセスなどの設計にチャレンジ。実際との差など多くの気付きに出会うはず。

(4)発表


日時:7月11日(土)13:00~16:00(その後、懇親会)
場所:おくりびとアカデミー
参加費:2000円(懇親会は別途実費)

※話題提供者プロフィール
山本幸美(やまもと さちみ)
看護師(認知症看護認定看護師)/認知症ケア専門士
美容ライター/ホリスティックビューティーインストラクター
『認知症の人の不利益をなくする』ことを目標に介護・福祉の分野で活動している。介護現場での実践をはじめ、介護職向けの講義を行っている。また、看護師のライセンスを活かして美容関係の仕事も行っている。

※ファシリテータープロフィール
須藤 順(すとう じゅん)
トリニティ(株)ソーシャル・ケア・デザイナー/(株)CCL取締役・コミュニティデザイナー
1981年生まれ。博士(経営経済学)、社会福祉士。ソーシャルワーカーを経て、中間支援機関でソーシャルビジネス支援に従事し、(株)CCLを立ち上げ、全国各地のコミュニティデザインや企業の新事業創造、コンサルティングを展開。2014年より、ソーシャル・ケア・デザインに参画し、医療・福祉・教育×デザインによるイノベーション創出をサポートしている。

※ソーシャルケアカフェ運営
秋本 可愛(あきもと かあい)
株式会社Join for Kaigo 代表取締役。
大学2年に認知症予防のためのコミュニケーションツールとしてのフリーペーパー「孫心(まごころ)」を発行。4号目が全国の学生フリーペーパーコンテストStudent Freepaper Forum 2011で準グランプリを受賞。 大学卒業後、株式会社Join for Kaigoを設立し「介護に関わる全ての人が、自己実現できる社会をつくる」を理念に掲げ、超高齢社会を創造的に生きる次世代リーダーのコミュニティ「HEISEI KAIGO LEADERS」を運営。2025年に業界内外の多様なリーダーシップネットワーク構築に向け活動中。

■ソーシャル・ケア・カフェ
http://care.trinitydesign.jp/

Posted by ブログ管理者

1  2

最近のエントリー
トリニティについて

先進国・新興国のデザインリサーチ及びデザイン開発によって、日本企業の海外での成功に貢献致します。
http://trinitydesign.jp/

info@trinitydesign.jp


海外提携会社の詳細はこちらをご覧下さい。